・「大麻と言う農作物」
 
大麻博物館 著                  
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日本人の営みを支えてきた植物とその危機

はじめに

「え、大麻?」「大丈夫なの?」

2001年、栃木県の那須高原に、大麻博物館という私設の小さな博物館をオープンしてから15年が経過しましたが、ずっとそのように言われ続けてきました。

大麻は栃木が、日本が誇るべき「農作物」です。当館では、かつての日本人が、衣食住の様々な場面で利用してきた「有用な資源」として、また「日本人のアイデンティティーと深いつながりを持つ植物」としての大麻について、様々な資料の収集や調査などを行ってきました。

長年の活動の結果、確信していることがあります。日本人にとって「米」は、現在も象徴的な農作物ですが、かつて「大麻」はそれに匹敵する重要な存在だったのではないか、日本人とはいわば「米と大麻をつくってきた民族」だったのではないか、ということです。その確信は深くなるばかりです。

近年、大麻は単なる「違法な薬物」ではないという認識が、少しずつ広がっています。欧米を中心にすでに大きな動きとなっている「ヘンプの産業利用」「医療用大麻」「マリファナの合法化」といった報道を目にした方も多いかもしれません。しかし、この書籍は、そのようなテーマの書籍ではありません。ほんの60~70年前まで、日本人の日々の営みの中に当たり前のようにあったにも関わらず、現在の利便性・経済性を追求した社会の中で、顧みられることがほとんどなくなっている「農作物としての大麻」に関する書籍です。

「農作物としての大麻」は、現在、非常に深刻な局面にあります。長い時間をかけて育まれた独自の文化を次の世代へ継承していくためには、日本人にとって、大麻がどのようなものであったのか正確に理解することが必要不可欠です。そして、そのための時間は多くは残されていません。

表紙の写真について、大麻の葉は手のひらの形に近いことから、植物学的に「掌状葉」と分類されます。本文中に紹介しますが、写真の手はまさに「日本人の営みを支えてきた農作物」を現代に継承してきた手です。

この書籍をきっかけに、少しでも多くの方々に「農作物としての大麻」について、ご理解いただければ幸いです。
大麻博物館(館長 高安淳一)
おわりに

大麻を取り巻く状況は、刻々と変化を続けています。欧米を中心に「ヘンプの産業利用」「医療用大麻」「マリファナの合法化」といった大きな動きがおこる中、この書籍ではそれらに殆ど言及することなく、多くの日本人に忘れ去られた「農作物としての大麻」について書いてきました。

繰り返しますが、「大麻という農作物」は現在、非常に深刻な局面にあります。「米と大麻をつくってきた民族」にとっては一大事のはずなのですが、その危機感を共有できるのは、全体からするとごくわずかです。

しかし、決して希望がないわけではありません。

大麻博物館には海外からの来館者も多いのですが、日本人が築き上げてきた世界でも類を見ない大麻文化に驚き、興味を持つ方は多くいらっしゃいます。世界的に日本の伝統的な文化への注目が高まる中、この独自の文化を海外に発信することは意味があるのではないでしょうか。

伊勢神宮は長きに渡り「絹と大麻」を神の衣としてきましたが、例えば、絹をつくっていた「富岡製糸場と絹産業遺産群」は2013年、世界遺産に登録されました。絹に負けぬ歴史や文化を誇る大麻ですが、世界遺産はともかく、海外での「日本の大麻」への認知が進めば、状況は大きく改善していくと考えます。

日本全国に残る大麻の痕跡を、海外にはない独自の文化として、観光資源や郷土学習のテーマに活用することも可能性の一つです。

大麻の糸や布については、手仕事への再評価がなされる中、今後さらに需要が高まると考えています。また、現在のテクノロジーを用いることで、新たな生産方法の開発が出来れば、素材として様々な可能性が拓けるのではないでしょうか。

これを実現するための第一歩は、少しでも多くの方々に「農作物としての大麻」について関心を持っていただき、理解していただくことです。大麻博物館を名乗る以上、「農作物としての大麻」に関する正確な情報発信を続けてゆくことは、私たちに課せられた使命であると考えています。
2016.12月 大麻博物館(館長 高安淳一)