染め、織りの産地と特徴

津軽こぎん刺し
(青森)
麻布に白の木綿糸で幾何学的な文様を地布が見えないほどびっしり刺し縫い(刺繍)したもの。
南部裂織
(青森)
古い布を丹念に細く裂き紐状にしたものを緯糸に、麻糸を経糸にして織ったもの。
南部絞り
(秋田,岩手)
古来、紫草や茜草から染まられていて「幻の染め」とされていた。紫根染や茜染といい、秋田県では重要無形文化財に指定されている。現在は化学染料も使いながら紫根染の伝統を守っている。
白鷹お召し
(山形)
白鷹お召しは結城や大島と並ぶ高級絹織物である。将軍が縮緬を愛用していたことからお召し縮緬、やがてお召しと呼ばれるようになった。染色した糸を織り込むため 模様が現れる。細かい経緯の絣としぼのあるのが特徴。
置賜紬
(山形)
米沢紬、長井紬、白鷹紬の3つの地方をまとめていった。米沢紬は草木染を主体に紅花、刈安、山桃、くちなし、栗など豊富な染料で染めた糸を使って織りあげる。長井紬は琉球産の織物の文様が影響され米沢琉球(米流)とも呼ばれるようになり、絣柄が特徴。白鷹紬は白鷹市で米沢紬と同じ組織で、昭和初期につけられた名称。
精好仙台平
(宮城)
高級な平縞の織物。上品な光沢と張りがある。袴地の最高級品として全国に名をはせている。現在では山形県で生産される方が多い。
秋田八丈
(秋田)
秋田海岸に自生するハマナスの根を染料とした鳶色(赤茶)が特徴。八丈島の黄八丈とともに八丈絹の双璧といわれている。
会津木綿
(福島)
茶や藍を使うすっきりした縦縞が会津木綿の特徴。
からむし織り
(福島)
数年前まで会津上布と呼ばれていた。苧麻の産地を生かし20年ほど前に織り始められた麻織物。
本塩沢
(新潟)
塩沢お召しともいう。細かなしぼが特徴で、シャリシャリ感のある絹織物。越後縮みや小千谷縮みのような麻の織物の技術を取り入れて生まれた絹の縮み。本塩沢のしぼは、絣糸と強撚糸の右撚り・左撚りの3つの杼(ひ)を使って織ることで生み出されるため、非常に細かいしぼが特徴。
小千谷縮み
(新潟)
しぼがありシャリ感があって涼しい小千谷縮みは、横糸に強く撚りをかけて織った麻布。また、白地に縞や花模様を織るようになり緯糸を括ってから染めて織る緯総絣が発展した。
十日町紬
(新潟)
伝統的工芸品として十日町絣ともいう。絣糸の染め方に特徴があり、「つき棒」という道具で染料をこすり付けて絣糸を染め、木綿糸で括る。手括りの加減でわずかなかすれを生み、独特の味わいになる。
越後上布
(新潟)
江戸時代に武士の正式礼装の裃として用いられていた。越後上布は、苧麻の産地、福島県昭和村から青苧(あおそ)=(麻の繊維)を買い入れ、いくつもの工程を経て織り上げた布を、冬に雪にさらして伝統の麻布ができる。この技法は重要無形文化財に指定を受けている。
伊勢崎絣
(群馬)
伊勢崎銘仙と呼ばれる軽くて丈夫で色柄が豊富な絹織物。また、他に類を見ない絣技法の多様さが特徴である。
長板中形
(埼玉)
型による藍染。湯上り用衣類だった湯帷子(ゆかたびら)=浴衣に多用された。絵画的な粋な文様と、表、裏の両面に寸分のずれもなく型付けする技が特徴。
結城紬
(茨城)
結城紬の歴史は奈良時代にまでさかのぼる。工程は、真綿を手で紡ぎ(糸紡ぎ)、絣括り、いざり機という伝統的な機織りの3つの工程で精密な高度な技術が結城紬を支えている。三代着て味がでる、といわれるほど丈夫で保温性があり暖かい。S3年に重要無形文化財に指定される。
東京友禅
(東京)
江戸友禅とも呼ばれる東京地方の手描き友禅。京友禅とは逆であっさりとした柄とさっぱりとした色づかいが特徴。
江戸小紋
(東京)
伊勢型紙による高度な技で染めた文様。文様は数千種あるといわれている。元は武士の裃の模様であった。中でも鮫小紋、行儀、角通しの3つは「江戸小紋三役」と呼ばれ、文様の中でも格が上である。
黄八丈
(東京)
植物の染料(八丈刈安(イネ科の植物))に浸し、天日乾燥を約16日間繰り返し、椿と榊のアクでもみつけて発色させる。鳶八丈(マダミの樹皮で染めマダミのアクで媒染)黒八丈(椎の樹皮で染め泥染め)
多摩織
(東京)
多摩織りにはお召し織、紬織、風通織、変り織、綟織(もじり)、と5種類ある。 右撚りと左撚りを同時にかけ、細かなしぼを出し、平織り綾織りなどの技法を用いる。軽くなめらかで動きやすく、しわになりにくいのが特徴。かつては、男物用だったが昭和4年に多摩結城という女物の紬を開発。
村山大島紬
(東京)
もともとあった村山紺絣と紬の技術を利用して生まれた。奄美大島の大島紬に似た絹織物であるので対抗してこの名がある。しかし技術はまったく異なり、経糸の防染を板締めで行うのが特徴である。
唐桟織
(とうざん)
(千葉)
江戸初期にオランダ船によって運ばれてきた織物から発した。絹のように細く紡いだ木綿糸をインド藍で染める。渋みのある縞柄が特徴。
信州紬
(長野)
上田紬、飯田紬、有明紬、松本紬、伊那紬、山繭紬。
信州紬とは、経糸に真綿の手紡ぎ糸、生糸、玉糸(蚕が2匹入っている繭ら取った糸)、山繭糸(野外でクヌギやナラの葉を食べて緑色の繭を作る天蚕から取った糸)のどれかを使い、緯糸は、玉糸か真綿の手紡ぎ糸を手投げ杼
(ひ)で織ったものをいう。紬の宝庫といわれるほど栄えている信州紬は、昭和50年に伝統的工芸品に指定されている。 
郡上紬
(岐阜)
郡上紬は、千年以上の歴史をもつ絹糸で「曾代絹(ひだいぎぬ)」と呼ばれ伊勢神宮の神職の装束を織る糸とされていた。農民たちは、そのくず繭を紡いで自家用の紬を織っていたが、時代と共にすたれていった。が、農業開拓者としても優れていた「宗廣力三(むねひろりきぞう)氏」が新たな技法と共に蘇らせ風格のある紬として有名になった。力三氏は、S57年「人間国宝」に紬で初めて個人認定される人物。ぼかしやグラデーションをつかった素朴な色合いとふっくらとした風合いが特徴である。
加賀友禅
(石川)
加賀百万石の城下町だった金沢を中心に染められている手描き友禅。落ち着きのある写美的な絵画調の柄が多く、葉の虫食いなどでアクセントを付けたり全体に細かく描いた優しげな柄。自然を巧みに描き出すのが特徴。
牛首紬
(石川)
2匹の蚕が一緒に作った玉繭から直接糸を引き出す、のべ引きという方法で行なう。その為玉繭ならではの光沢のある風合い。くぎを引っ掛けても破れないといわれるほど丈夫で別名「くぎぬき紬」とも言われている。
能登上布
(石川)
二千年の歴史を持つ伝統の麻布。文様の多くは「蚊絣」と呼ばれる細かな十字で構成されているのが特徴。s35年に無形文化財に指定。
有松・鳴海絞
(愛知)
丈夫な木綿地に染める。手法だけでも縫い絞り、手筋絞り、三浦絞りなど軽く百種を超える技法がある。木綿地だからこそバリエーション豊かな絞りが生まれた。
名古屋友禅
(愛知)
色数を抑えた単彩濃淡な色使い。花鳥風月を基本図案としシックに描かれている。
浜縮緬
(滋賀)
長浜ちりめんともいい、丹後と並ぶ縮緬の二大産地。浜ちりめんの風合いは、琵琶湖の水にあるとされていて、しぼがふっくらしていて、しっとりと柔らかいのが特徴。
近江上布
(滋賀)
近江上布には、生平(きびら)と絣柄がある。生平とは未晒し(みさらし)の麻糸で織った無地の布で、大麻の手績み(てうみ)糸を使うのが特徴。
絣柄は、型紙捺染や櫛押捺染
(くしおしなっせん)で染めるのが特徴。また手もみをする独特の仕上げ法によって出されるしぼも近江上布の特徴。

型紙捺染 = 揃えた糸に型紙を当て、駒ベラで染料を付ける。 
櫛押捺染 = 櫛の形をした道具に張られている布に染料を含ませ糸に押し付ける。

京友禅
(京都)
京都で染められている手描き友禅染めのこと。
はっきりとした模様と華やかな彩りで描かれているのが特徴。
金銀箔や刺繍、多彩な文様なども京友禅特有の美しさが現れている。
友禅染の工程は、14工程ほどあり京都ではこれを専業分業化している。
型友禅染め
(京都)
型紙を生地の上に置いて染める技法。大きく分けて3通りの技法がある。
型友禅
は、型紙の上からへらで写し糊をぬる方法。江戸小紋は、型紙の上に防染糊を置いて模様を白く抜く方法。更紗の柄は型紙の上から丸刷毛で染料をすりこむ方法などがある。柄によって一枚の着物に何十枚何百枚と型紙を使用する。
型紙は、和紙を柿渋で2〜4枚張り合わせ、さらに表面に柿渋を引いて乾燥させて作りさまざまな模様を彫る。その型紙は、江戸時代から伊勢産のものが最高級品とされ、伊勢型と呼ばれている。
京鹿の子絞り
(京都)
染め上がった文様が鹿の子の背模様の斑点に似ていることから命名された鹿の子しぼり。
京鹿の子は綸子、縮緬などの絹に絹糸で括る本疋田絞り、絹糸に木綿糸で絞る針疋田絞りをはじめ、傘巻き絞りや帽子絞りなど、絞りの種類も多く、細かな作業で高度な技と集中力が必要である。
丹後縮緬
(京都)
京友禅を支える高級絹織物。
撚らない生糸を経糸にし、右撚り、左撚りにした生糸の緯糸を交互に織込んで生地にし、不純物を洗い流してしぼを出す。
美しくふくらみのあるしぼで、「無地ちりめん」、ジャガード機で地紋を表す「紋ちりめん」がある。
西陣織
(京都)
精密に織りあげる文様と 多種多様な織り技は、日本を代表する絹織物。
西陣の文様は、古来から公家の装束に用いられてきた有職文様をはじめ、各時代に新しい技法を開発するなど、躍進を続け、西陣で織れないものはないといわれている。
弓浜絣
(鳥取)
弓ヶ浜絣はもともと自家用、副業として織られていた木綿織物で、にじんだような絣足が特徴。絵絣の文様は生活の中で生まれ、育まれてきた。その為身近なものをモチーフにしたオリジナルの文様が多い。
備後絣
(びんご)(広島)
黒っぽい藍の地色が特徴の木綿絣。江戸時代に井桁文様を織ることに成功。
日本三大絣の一つ。
伊予絣
(愛媛)
備後絣、久留米絣と共に日本三大絣。太い線でくっきり織り出す柄が多い。
文様は、井桁絣、十字、麻の葉などシンプルである。
阿波正藍染め
(あわしょう)
(徳島)
藍は、藍玉、すくもと呼ばれる原料に加工して染められている。
木綿が主だが、現在は天然染めのよさが見直され、高レベルな藍建
(あいだて)の技を活かし、藍の型染めや藍染阿波友禅なども生産されている。
阿波正藍しじら織り
(徳島)
しじら織りは、阿波藍で染める美しい縞の綿縮み。ちりめんのしぼとは違い、2種類の織り方を交互に組み合わせることで独特のしぼができる。
久留米絣
(福岡)
他の産地にくらべて幾分カチッとした幾何学文様や積み木型で構成する絵柄が特徴絣糸を天然藍で染め、投杼機(なげひばた)で織るという伝統的な技術は健在。S32年に重要無形文化財に指定された。木綿絣が主だが、ウール絣や正絹絣も生産されている。
博多織
(福岡)
絹なりの音も美しい極上の帯で、代表である献上博多は、経糸緯糸を密に打ち込んで強く織るため張りと艶があり、締めくずれしない。
佐賀錦
(佐賀)
佐賀錦は金箔、銀箔、漆を貼った特製の和紙を細く裁断したものを経糸緯糸にして織りあげる豪華な織物。紗綾形、網代(あじろ)、菱文など数十種類の地紋がある。
本場大島紬
(鹿児島)
泥染めで、染め専用に作った田んぼの泥に、糸を浸して染める技法。
テーチ(車輪梅)という幹の煮汁で20回染め、泥に浸すという工程を何回も繰り返し、深みのある、艶のある、黒色が生まれる。
久米島紬
(久米島)
紬の発生地といわれている。
島で採取される植物から取った染料と泥によって染めあげられた5色の基本色で、鳥、花形、亀甲など約80種の文様で織られている。布はしなやかで艶やかさが特徴。
芭蕉布
(沖縄)
糸芭蕉から取った繊維を糸にして織ったものが芭蕉布。軽く張りのある生地。
首里織り
(沖縄)
古くは、身分の高い人々の衣装として、格調高い織物であった。
花倉織り(複雑な文様で夏用の衣)花織り(豊富なデザインとかわいらしい刺し子を思い出させる織り)ロートン織り(経糸を浮かして織った、立体感のある地紋)などがある。
読谷山花織り
(よみたんざん)
(沖縄)
大きく分けて二つの織り方がある。
一つは平織りの地に別糸を織り込み、刺繍をしたように花の文様を織り出す(手花織り)。
二つめは、機の部品(綜絖
(そうこう))を使って緯糸を浮かせて織ることで文様を出す(ヒャイバナ織(綜絖花織))。
3つの基本文様(四角い点で花を表現した文様)があり、どちらの織り方にもその文様を組み合わせて織り出した刺繍のような織物明治中期より衰退していてほぼ幻となっていたが、S39年に復元され、後に重要無形文化財に指定された。
琉球紅型
(沖縄)
花鳥風月の文様で、明るく鮮やかなはっきりとした色柄の染物。
琉球絣
(沖縄)
植物染料を使った鮮やかな色が多く、文様は、およそ六百種といわれている。
生活用具や動物、星や雲など自然を図案化したものが多い。
宮古上布
(宮古島)
一反分の糸を作るのに3ヶ月以上かかるほどの極細の糸で、透けるような薄さ、麻とは思えないような滑らかさと繊細な柄、ロウを引いたような光沢の夏の高級着尺地である。
八重山上布
(石垣島)
たくさんの植物染料の中、八重山だけに自生する紅露(クール)という植物ですりおろした絞り汁がそのまま染料になる上質ですぐれた染料がある。
麻の地に映える焦げ茶色の絣柄の部分が、そのクールの色で、八重山上布ならではの特徴になる。また、海晒しをし、南国ならではの山、太陽の恩恵を受けて堅牢な染めになる。
ミンサー織り(石垣島) 沖縄の衣装に締める細い帯。厚地の立体的な地紋が特徴。
また、八重山ミンサーや読谷山ミンサー、与那国ミンサーなどがある。