組子デザイン
繊細な桟が幾重にも重なり合うことで、さまざまな紋様を描き出す日本の伝統技術「組子」。
釘や金具をつかわず、木の溝や角度をつけることで組んでいきます。
組子のデザイン「意匠」は、自然界の形をモチーフにしたものが多くあります。
そして、それぞれが、吉兆、子孫繁栄、無病息災などの意味付けをしたものです。

菱 
hish
二重菱 
futaebishi
子持ち菱 
komochibishi
 菱の文様は、池や沼でとれる一年草のヒシの実または菱の葉を図案化したものとされています。菱文様は変化に富み種類も多く、家紋としても平安時代には成立しています。組子では地組として作られることが多く、単純な形でありながら和柄の原型ともいえる美しさがあります。 菱組は二重、三重に組むことでさまざまな表情に変化します。大小二つの皮脂が連鎖するこの模様は、シンプルながらどこか遊び心のあるデザインです。ヒシ繁殖能力が高いことから子孫繁栄、またその生命力の強さから無病息災を願う縁起の良い文様として伝えれています。 子持ち菱は真ん中の力強い太い桟(親)と細い桟(子)で構成されており、すっきりとしながら変化に富んだ美しい図形を組み描きます。親子が寄り添うように見えることから「子持ち」という名がつけられました。子孫繁栄、無病息災の柄として願いが込められています。
 三つ組手 
mitsukude
 麻の葉 
asanoha
 八重麻の葉 
yaeasanoha
三方からなる桟を「組手」といわれる溝を切って組むことで、連続する三角形ができます。三つ組手はその昔、その道を究めた職人のみぞ知る技法として知られていました。現在は、その中に文様の葉を入れる地組として作られることが多いですが、シンプルを好まれる方には最もお勧めしたいデザインです。 幾何学模様の麻の葉は魔除けの効果があると伝えられ、平安時代から仏像の装飾としても描かれています。また、麻は丈夫ですくすくとまっすぐに伸びることから、日本では子供の成長を願って産着に用いる風習がありました。和柄の中でも人気が高く、現代では織物や漆芸の意匠としてもひろく愛好されています。 八重という言葉には「たくさん」という意味があります。一般的には組子にくらべて八重ものは、葉(は)とよばれる木片を二重、三重に織組むことでより複雑な文様へと発展していきます。熟練職人の高い技術を必要とし、もっとも手間のかかるデザインのひとつです。
麻の葉柄の由来と同じく魔除けの効果があるとされています。
胡麻
goma

sakura
桜亀甲
sakurakikkou
すっきりとした直線が印象的で、胡麻のさやの切り口が図案化されたものと伝えられています。六世紀、日本に伝来した胡麻の実は大変健康に良く長寿の薬として重宝されたことから、無病息災の縁起良い文様として人々に愛好されました。
佐賀鍋島藩の定め柄であり、武士の正装である裃(かみしも)の柄に用いられていた格調高き文様です。
明治の終わり、日米友好のシンボルとして日本からアメリカに桜の苗が送られました。咲いて美しく、散り行く姿もまた美しい桜は日本の花として世界中に親しまれています。童謡「さくら」にあるように、古くから日本人は桜の花に特別な思いを寄せ、人生を重ねました。古くからそれは組子にも描かれています。 日本の花として愛好される桜は組子においてもさまざまな表現があります。芯の亀甲組みをアレンジすることで繊細さが引き立ち、きらめく宝石を散りばめたようにも映る可憐な桜文様をつくりました。オリジナル文様として、リビング障子にはこの「桜亀甲」が使われています。

ume
七宝亀甲
shippoukikkou
重ねりんどう
kasanerindou
その愛らしさ、芳香、独自の枝ぶりなど、古くから日本で愛されてきた梅の花をモチーフにした文様です。
花言葉は「高潔・上品・あでやかすさ」。寒風の中、香を漂わせながら花開く様や、紅梅のあでやかな美しさからは力強ささえ感じられます。
しなやかな曲線が女性に人気のあるデザインです。
七宝亀甲は三つ組手の中に曲げ木の葉を入れて組み付ける繊細な組子です。
七宝とは、仏教の経典に書かれている七つの宝物。亀甲はその名の通り、亀の甲羅の六角形に由来する長寿吉兆の象徴であると伝えられています。耐えることのない永遠の連鎖と拡大を意味し、人と人との関係が円満に広がるさまを表す縁起のいい文様です。
秋に咲く竜胆の花をモチーフにした文様です。竜胆文は平安貴族の衣服の文様としても愛好されていました。つなげていくと輪が浮かび上がるようにみえることから、地方によっては職人のあいだで「重ね輪胴(りんどう)」の文字が用いられます。
愛らしさと面白さがある人気の高いデザインです。
八重裏花亀甲yaeurahanakikkou
変わり裏花亀甲kawariurahanakikkou
八重籠目
yaekagome
古くからあるこの亀甲文様は、漢字や動物、植物との組み合わせをモチーフにして時とともにデザインの幅をひろげてきました。
八重という言葉には「たくさんの」という意味があり、もっとも高度な技術と手間を要する組子のひとつです。亀甲柄が数多く重なって紅葉のようにみえるとても美しい文様です。
平安時代から、公家の調度品・服装・輿車(こしぐるま)などの装飾として用いられました。独自の様式を持つこの文様は長寿や吉兆を祝うめでたい図柄として現在まで受け継がれています。三角形の図柄が入ることでよりうるわしい花びらの形にみえてきます。  籠目は竹籠の編んだ形を図案化してもので、日本古来より伝わる伝統的な文様です。
「籠」という漢字は「竹」と「能」で出来ています。籠の中には能が封印されていて神秘的な力が宿るとされ、邪気を払う魔除けの印として用いられました。
童歌には「かごめかごめ」もあるように、人々の間で深く親しまれています。
菱三の字くずし
hishisannojikuzushi
毘沙門亀甲
bishamonkikkou
枡つなぎ
masutsunagi
中国数学や和算の計算用具で算木というものがあります。縦、横に置いて数を表す姿が美しい図柄にみえることから「算木崩し」「算崩し」と名付けられました。
石畳のように三本ずつ配列すると「三崩し」。五本ずつなら「五崩し」とよばれます。
スタイリッシュで現代のデザインの中にも溶け込みます。
亀の甲羅をかたどった亀甲柄を三つ組み合わせ幾度となく連続させたこの文様には、永遠の繁栄を願うという意味が込められています。
「毘沙門甲」という名前は四天王の一人、毘沙門天様の鎧の柄からつけらえています。戦勝、必勝の神であり、家内安全・商売繁盛など福徳を司る神としてひろく信仰されています。
正方形の枡組の中に井桁の組子を入れることで、連続した枡の形が浮かび上がります。江戸から、明治、大正を通じて若衆の半天や法被、浴衣、手ぬぐいなどの柄に用いられたなじみ深い文様です。人と人とを結ぶ良縁の意味が込められており、ひろく庶民に愛されました。
地域によっては吉原つなぎともいわれます。
連井筒
tsutsuidutsu
万字つなぎ
manjitsunagi
角麻の葉
kakuasanoha
井筒とは、井戸の周囲に設置してある円筒状や四角形の囲みのことをいいます。生活に欠かせない水に関する文様として古くから図案化されました。
平安時代初期に成立した伊勢物語の二三段。
筒井つの井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに」歌のなかで井筒に二人の思い出を重ね、恋しい思いを綴っています。
インドのビシュヌ神の胸の旋毛の形を示すもの。また仏教ではお釈迦様の胸にもみられる縁起のよいマークです。おめでたいことが起こる前兆に現れると考えられ、長い歴史の中でさまざまな民族に親しまれてきました。その意味や解釈には魔除け、吉祥、幸運、神聖という願いが込められています。 90度に交わる正方形の格子のなかに組み描く麻の葉を「角麻の葉」といいます。伝統的な書院障子や欄間に見られることが多く、麻の葉と同様にポピュラーな組子文様として親しまれてきました。
直線や市松模様などテトリスのような面白いデザインが表現できるのもこの模様の魅力dす。に
桐麻
kiriasa

青海葉
seigaiha

七宝つなぎ 
shippoutsunagi
桐の木には鳳凰が住むといわれたことから、古くは皇室にゆかりのあるものだけに許された高貴な文様とされてきました。
すっきりとした堅茂のラインと桐文様をあわせた組子障子は格式高い伝統的な書院造り、床の間に飾られました。現代の空間においてもその存在感を十分に引き立たせます。

どこまでも広がる大海原に絶えず繰り返される穏やかな波を表し、「平穏な暮らしがいつまでも続くように」という願いを込めた縁起の良い文様です。名前の由来は、源氏物語にも登場する雅楽の舞曲からつけられたともいわれています。
シンプルな柄ですが、どこか懐かしく、広い海がもたらす恩恵を感じさせます。
七宝つなぎには古い歴史があり、寺社仏閣に多く用いられます。仏教の経典に書かれている七つの宝物とは「金・銀・瑠璃・珊瑚・瑪瑙・玻璃・千年生きるとされる??貝」。
連鎖する円には永遠に続く円満、調和、ご縁といった願いが込められています。そして、人との御縁や繋がりこそが、七宝に値することを示す柄でもあるのです。

縄目
nawame
三重菱
sanjyuuhishi

紗綾形くずし
sayagatakuzushi

 
縄目とは、雄と雌の蛇が交尾する姿を象った文様です。縄文人は蛇が自分たちの祖霊であると考えたいた説もあります。神社や正月に使われるしめ縄には、蛇の交尾から来た子孫繁栄の願いが込められています。  三重菱は、菱形を三重に重ねたものです。
水生植物のヒシは繁殖力が強いため、菱形文様には子孫繁栄、無病息災などの強い願いが込められています。
結婚式場やホテルなどにも、数多く用いられている美しい伝統文様です。  
紗綾形とは、中国の明から日本へ輸入された紗綾(さや)という絹織物に使われた文様です。
日本では桃山時代頃から染物の地文様、建築の和風装飾などに用いられました。
端正で品格のある雰囲気から皇族、武家に好まれた文様でもあります。